清掃備品は、時代を映す鏡
清掃という営みは、どんな職場にも欠かせない日常業務のひとつです。
床がきれいに保たれていること、ゴミが適切に処理されていること、手すりやドアノブが清潔であること。
こうした「当たり前」の風景の裏には、清掃スタッフの努力と、彼らが使う備品の存在があります。
しかし、今のように高機能で扱いやすい清掃備品が揃っているのは、実はごく最近のこと。
かつては、重くて扱いにくい道具を使い、手作業で汗を流しながら清掃を行っていた時代がありました。
清掃備品の歴史をたどることは、現場の働き方や社会の価値観の変化を知ることでもあります。
今回は、そんな「清掃備品の進化の物語」を、時代ごとにひもといていきます。

手作業の時代(〜昭和30年代)
・ほうきと雑巾が主役だった頃
昭和の初期から中期にかけて、清掃は完全に人の手に頼るものでした。
備品といえば、竹製のほうき、木の柄がついたモップ、麻や綿の雑巾、ブリキのバケツ。
どれも素朴で、今のような機能性はありません。水を汲むのも、雑巾を絞るのも、すべてが手作業。
床を磨くには、膝をついて雑巾がけをするのが当たり前でした。
この時代の清掃は、まさに「根性と体力」がものを言う世界。
特に冬場の清掃は過酷で、冷たい水に手を浸しながら雑巾を絞る作業は、手がかじかむほどの重労働でした。
また、清掃に使う水は井戸や水道からバケツで運ぶ必要があり、広い施設では何往復もすることに。
・清掃の“見た目重視”と職人技
当時の清掃は、今のように「衛生管理」や「感染症対策」といった概念が一般的ではなく、
「見た目がきれいであればOK」という考え方が主流でした。
そのため、床の光沢や窓の透明感など、目に見える部分の仕上がりにこだわる傾向が強く、清掃スタッフの中には「床磨きの達人」や「窓拭きの名人」と呼ばれるような、熟練の技を持つ人も多く存在しました。
また、清掃は女性の仕事とされることが多く、家庭の延長線上にある業務と見なされていた時代でもあります。
その一方で、工場や大型施設では男性スタッフが重い備品を扱いながら清掃を行うこともあり、清掃という仕事がいかに多様で、現場ごとに異なる工夫が求められていたかがうかがえます。

機械化のはじまり(昭和40〜50年代)
・高度経済成長とともに進む清掃の“業務化”
昭和40年代に入ると、日本は高度経済成長期を迎え、都市部では高層ビルや大型商業施設が次々と建設されました。
それに伴い、清掃の現場も大きく変化していきます。
広いフロアや複雑な構造の建物を効率よく清掃するためには、従来の手作業では限界がありました。
この時代に登場したのが、電動掃除機やポリッシャー(床磨き機)といった清掃機器です。
これらの機械は、作業時間を大幅に短縮し、均一な仕上がりを実現する画期的なツールでした。
また、ワックスがけや床の洗浄も機械で行えるようになり、清掃の質が一段と向上しました。
・備品の選定と管理が“技術”になる
機械化が進むにつれ、清掃備品の選定やメンテナンスも重要な業務となっていきます。
「どの機種が現場に合っているか」「消耗品の交換頻度はどのくらいか」など、備品に関する知識や判断力が求められるようになり、清掃業務はより専門的な領域へと進化していきました。

衛生意識の高まりと多様化(平成時代)
・「きれい」から「清潔」へ
平成に入ると、清掃に対する社会の意識が大きく変わります。
特に病院や食品工場、介護施設などでは、衛生管理が業務の中心となり、「見た目のきれいさ」だけでなく、「目に見えない汚れ」や「菌・ウイルス」への対応が求められるようになります。
この流れを受けて、備品も大きく進化しました。
たとえば、マイクロファイバークロスは、繊維の細かさによって微細な汚れや菌を拭き取ることができ、洗剤を使わずに清掃できるため、環境にもやさしいと注目されました。
また、抗菌加工されたモップや、静音設計の掃除機など、使用者の負担を軽減しつつ、衛生面にも配慮した備品が次々と登場します。
スマート清掃の時代へ(令和〜現在)
・自動化と環境配慮がキーワード
令和に入り、清掃備品はさらに進化を遂げています。
特に注目されているのが、自動床洗浄ロボットやIoT連携の清掃管理システムなど、デジタル技術を活用した「スマート清掃」の広がりです。
これらの技術は、清掃の省人化・効率化を実現するだけでなく、清掃の“見える化”を可能にし、品質管理や作業計画の最適化にもつながっています。
また、再生素材を使ったクロスや、環境負荷の少ない洗剤など、サステナブルな備品の導入も進んでおり、清掃は企業の環境対応の一環としても重要な役割を担っています。

道具の進化は、現場の進化
清掃備品の100年を振り返ると、そこには現場の知恵、技術の進歩、そして社会の価値観の変化が詰まっています。
単なる「道具の変化」ではなく、それを使う人々の工夫や、働き方の変化が積み重なって、今の清掃があるのです。
アイング株式会社はこれからも「ただの作業」ではなく、職場の質と安全を支える重要な業務として、
そして企業の信頼を支える“静かな主役”として、進化を続けてまいります。